データベース技術の概要とAIとの連携
データベース技術の歴史:データの管理方法の進化 📜
データベースの歴史は、コンピューターの進化と共に、より効率的に、より大量のデータを扱うための工夫の歴史です。
1960年代:階層型・ネットワーク型データベースの誕生
- 概要: データが木のような構造(階層型)や、網目状の構造(ネットワーク型)で管理されていました。IBMの「IMS」が代表的です。
- 特徴: 特定の用途では高速に動作しましたが、データの構造が複雑で、欲しい情報を柔軟に取り出すのが難しいという課題がありました。
1970年代~1980年代:リレーショナルデータベース(RDB)の黄金時代
- 概要: 現在も主流である「リレーショナルデータベース(RDB)」が登場しました。これは、データをExcelのような行と列からなる表(テーブル)の形式で管理し、テーブル同士を関連付ける考え方です。
- 代表例: Oracle, IBMのDB2, そしてPostgreSQLやMySQLといったオープンソースのRDBもこの時代に源流があります。
- 特徴:
SQLという標準的な言語で、直感的かつ柔軟にデータを操作できるようになったのが画期的でした。データの整合性を保ちやすいという利点もあります。
1990年代:オブジェクト指向・データウェアハウスの広がり
プログラミングで使われる「オブジェクト」という考え方をそのままデータベースに持ち込んだオブジェクト指向データベースや、分析目的で大量のデータを保管するデータウェアハウスという概念が生まれました。
2000年代以降:NoSQLの台頭
- 概要: Webの爆発的な普及により、RDBでは対応が難しい超大量のデータ(ビッグデータ)や、形式が一定でないデータ(非構造化データ)を扱う必要が出てきました。そこで登場したのが「NoSQL(Not only SQL)」です。
- 種類: Key-Value型、ドキュメント型、カラム型など様々な種類があり、データの柔軟性や分散処理のしやすさを重視しています。
現在主流の「AI + データベース」:ベクトルデータベース
現在、生成AIの分野で最も注目されているのが「ベクトルデータベース」です。
- 概要: テキスト、画像、音声といったデータを「ベクトル」と呼ばれる数値の配列に変換して格納するデータベースです。
- 何がすごいのか?: AIは、単語や画像の意味・特徴をこの「ベクトル」として捉えます。ベクトルデータベースを使うと、キーワードの一致ではなく、「意味が似ている」「特徴が近い」といった曖昧な条件で、超高速にデータを検索できます。
- 主な用途:
- RAG(検索拡張生成): ChatGPTのようなAIに、社内文書や最新情報など、AIが元々知らない知識を教えて回答させる技術。
- 画像検索: ある画像と似た雰囲気の画像を検索する。
- 推薦システム: ユーザーの好みに似た商品やコンテンツをおすすめする。
PostgreSQLとAI:拡張機能 pgvector
広く使われているPostgreSQLは、拡張機能を追加することで様々な能力を発揮できます。AIとの連携で特に有名なのがpgvectorです。
pgvectorとは?:
- PostgreSQLに、上で説明したベクトルデータを保存し、高速に検索する機能を追加するための拡張機能です。
- これをインストールするだけで、使い慣れたPostgreSQLを、強力なベクトルデータベースとして利用できるようになります。
pgvectorのメリット:
- 導入が簡単: 新しいデータベースを別に用意する必要がなく、既存のPostgreSQL環境に追加するだけで始められます。
- 運用が楽: データのバックアップや管理など、これまでのPostgreSQLの知識やツールがそのまま活かせます。
- SQLが使える: ベクトルデータの検索も、使い慣れたSQLの構文と合わせて実行できるため、学習コストが低いです。
例えば、「AIについて教えて」という質問があった際に、pgvectorを使えば、DBに保存しておいた関連文書の中から「人工知能とは」「機械学習の仕組み」といった意味的に近いドキュメントを瞬時に探し出し、それをヒントとしてAIに渡すことで、より精度の高い回答を生成させることができます。
最近では、pgvectorをさらに高性能にするpgvectorscaleといった新しい拡張機能も登場しており、PostgreSQLをAIの情報源として活用する流れはますます加速しています。